第10章 加納
「加納」
突然、彼が私を呼んだ。
いきなりで私は、返事をするのが遅れた。
「なに?」
「どうする?」
その言葉に女子が私を見る。
「謝って、もう私に関わらなければいい…あ、一人反省文50枚書いて貰おうかな」
「な…なにそれ!調子に…」
「のってたのはあんたの方だろ?」
「…っ…」
白河君の剣幕に、彼女はもう何も言わなかった。
そして反省文50枚を、私と白河君以外の人が書いて来た。
私はそれを本をぱらぱら捲るように、対して読まずに全部燃やした。
「ごめん」とか「もうやらない」とかどこか嘘に見えるから。
どこまで本心か分からない彼らの言葉をこうして燃やして忘れよう。
その場に白河君もいた。
「こんな発想するなんて、余程ストレス溜まってたんだな」なんて嫌味みたいな事を言いながら。
それでも私にこうして付き合っている(別に頼んではいない。大量の反省文をどうするのか彼自身気になっただけらしい)彼は、意外と面倒見がいいのだと思った。
「これで嫌な事はお仕舞い」
燃え上がる炎を見ながら呟いた。
それを見た白河君は笑った。
彼の目には私が潔く見えたのだろう。
そんな彼が良いなと思った。
初めて誰かの事をそんな風に思った。
でも好きなのかわからなかった。
いや、認めたくなかった。
変なプライドが邪魔をして、素直になれなかった。