第9章 衝突2
「やめて!」
ドンっと体を押した音と、同時に静止の言葉が聞こえた。
「…っあんた!」
「…あなた達恥ずかしくないの?下級生をいじめて…みっともないわよ」
「美月先輩…」
夢を庇うように立っていたのは美月だった。
「…ごめんね夢ちゃん…怖い思いさせて…」
「っそんな…!」
夢には、今こうしてるだけで充分だった。
どれだけ勇気のいる行動だったかと思うと、本当にそれだけで胸がいっぱいだった。
「何、青野?正義の味方気取り?」
「当然の行動をしただけよ」
「…むかつく!」
二人が美月に向かって手を伸ばす。
しかし、その内の一人の腕が、横から捕まれた。
「…ホント…なにしてんの?」
「あ…」
その声の主に、さっきまでの威勢は消え失せ、二人同時に顔を青ざめた。
「…なんで…白河が…」
一人が、掠れた声を発した直後だった。
「一体なんの騒ぎです!?」
白河の後に駆けつけたのは、教育指導で2年の学年主任で、清く正しく厳しくのがモットーで有名な先生だった。(このモットーのおかげで大半の生徒に恐れられている)
「まっ!貴女!なんですかっそのカッターは!しかも人に向ける等、言語道断!没収です!」
と言うなや目に見えぬ速さで、カッターを没収した。
「な…なんで…」
「なんでじゃありません!授業中にも関わらずこんな騒動を起こして!」
まったくとぶつぶつ小言を言っている。
「大丈夫?青野も…」
「はっはい!」
「白河君…いいタイミングね…助かったわ」
「ああ…教室戻る時に丁度、学年主任が見回っていて…ちょっと話してたらなんか声が聞こえたから、主任連れて来たわけ」
「そう…私も教室行こうとしたら、夢ちゃんが見えたから…焦ったわ」
「先輩方…ありがとうございました」
しみじみとしていると…
「貴方達も来なさい!事情を聞きます!」
と怒り心頭の主任が声をかけてきた。
「「「はい…」」」
主任の剣幕に気圧された様に返事をしたのだった。