第9章 衝突2
教室へ戻る時だった。
「あいつ全然堪えてなくない?」
聞き覚えのある声だった。
(そうだ…私を呼び出した先輩だ…)
身体中に冷や汗が吹き出る。思わず身体が固くなり、その場から動けなくなった。
「…もっと激しいのがいいかもね…」
「そういや青野も遠野に目つけられたんだよね。あいつ何やるかわかんないから青野ヤバイかもね」
「あはは!あたしらも人の事言えなくない?」
(――――――!)
「まあね!でも、ざまあみろって感じ!」
かっとなり思わず足が動いていた。
「―なんでっそんな事言うんですか!」
二人の目が夢を捉えた。
「美月先輩が…貴方達に何かしましたか?」
「は?」
「てか…」
夢の胸ぐらを掴み、そのまま壁にぶつけた。
「っ…!」
背中に痛みが走る。
「何言ってんの?てかさ…あたしらが一番ムカついてるのは…」
「あんたなんだけど」
チキチキとカッターの刃を出しながら、夢に見せつける様に近づける。
カッターの刃が目の前に迫って夢は真っ青になった。
全身が恐怖に支配される。
(―怖い…でもっ!)
心臓が五月蝿いくらい鼓動を打つ。
それでも、なけなしの勇気で相手のカッターが握られている方の腕を掴む。
「…こんなもので脅さないと気がすまないんですか?」
「は?」
―せめて気持ちだけでも…負けたくない
「美月先輩の影口を…言う人なんかに負けません!さっきの言葉取り消して下さい!」
「ンだとぉ!?」
夢の言葉にかっとなり、夢目掛けてカッターを持った腕を振り落とした。