第7章 先生の嫉妬
でも、そんな事は、自分より大人なこの人は知ってるだろう。
「…先生って、女性の趣味悪いんですね」
「…それ、自分の事言ってるのか?」
美月は頷く。
「だって、私初めて告白されましたもの」
美月の言葉に驚く。
「告白なんて何回もされてると思ったよ…」
美月は首を振る。
「先生は、今流れてる私の噂聞いてます?中学の時も似たような噂流れたんです」
「………………」
「白河君と同じクラスになった時からです。ただ何度か話しただけで、私が白河君の事が好きという内容から、いつの間にか私達が付き合ってるなんて事になっていて…」
美月は沈んだ顔になりながらも、話を続けた。
「私、初めてそんな噂されてるのに気付いて、目の前が真っ暗になって、何も考えられなくなりました…。皆、勝手に人の気持ちを簡単に決めつける…それが怖くて…精神が不安定になって…体調も悪くなりました…」
紅林の胸に額をくっ付ける様に、埋める。
紅林は、そんな美月の頭を撫でた。
「私も…何か言えば良かったんでしょう…でも…頭が真っ白で…何を言えばいいか…どうすればいいかわからないまま…結局、私は何も出来なかった…」
涙が零れた。
初めて、誰かの前で泣いた。
今も、あの時と同じくらい苦しい。
「噂を信じない人より、信じる人の方が、圧倒的に多かった…今も、そう…遠巻きに見られる…」
「中学の時は治まらなかったのか?」
美月は首を振る。
「詳しくは、知らないんですけど…白河君が何かしてくれたみたいです…」
一呼吸間をおいて
「白河君に聞けば、何か、分かるかもしれないけど…聞く勇気がなくて…私は…ただ…また普通に、学校生活を送る事だけで必死でした…」
「そうか…」
「それなのに…またこんな…私、学習能力ないみたいです…あの頃より強くなる所が…弱くなってるみたい…」
大粒の涙が零れる。
泣き続ける美月を、ただ、抱き締めていた。