第7章 先生の嫉妬
「まさか、こんな事…先生に話すことになるなんて…思わなかったです」
まだ、涙を浮かべていたが、美月は紅林から離れ、顔を上げた。
「そっか…でも、俺は聞けて良かったよ」
微笑み合う。
「…今度は、ちゃんと…立ち向かわないと駄目…ですね…」
手が震える。
その手を、そっと包まれる。
「美月は、一人じゃないんだからな。俺がいるんだから」
紅林の言葉に驚く。
「俺は、もう美月の恋人だって思ってる…」
「返事もしてないのに?」
「そう。勝手にそう思っとく」
「本当、勝手ですね…」
「美月には、これくらい強引じゃないと駄目な気がするからな」
苦笑する。
ほんの少しの意地悪を思いつく。
「初めて先生とした時、あの時、説教でも良かったんですよ」
「…説教を聞きたい気分でもあったのか?」
「半分半分ですけどね」
自然とお互いに引き合い、唇を重ねた。
「…そういえば、先生…さっきから名前呼びですね」
「今頃言うか!?…二人だけの時は、いいだろ?」
軽くキスをする。
「そうですね」
美月も、軽くキスをして返す。
「美月は呼んでくれないのか?」
「あの噂が、片付いたらにします…」
「そうか。じゃ、早く片付けないとな」
コツンと額同士を付けて、笑い合う。
随分遅くなったので、紅林はまた美月を車で送った。
帰りの遅い娘を心配した母親に、二人して怒られたのは、また別の話。