第7章 先生の嫉妬
やっと身体を起こせたと思ったら、軽くふらつき紅林に抱き止められた。
「……………」
そういえばこんな風に、誰かに、彼に抱き締められたのは初めてかもしれない。
さっきまで、それ以上の事をしていたのに、恥ずかしい様な、こそばゆい様な…なんとなく顔を合わせたくなく、彼の胸に顔を埋める。
頭上からふっと笑われる。
(今、初めて、いえ、やっとこの人と向き合った気がするわ…)
「なんか…やっと甘えてくれたな」
そう言って強く抱き締められる。
(同じ様な事思ってるのね…)
「だから、話して欲しい」
「美月が悩んでる事、全部」
「…なぜ?先生の仕事のためにですか?」
意地悪な言葉に苦笑する。一呼吸して、
「俺が…美月のことを好きだからだよ」
「…………………」
予想外の言葉に、ピタッと固まる。
「…それは先生としてですか?」
美月の言葉に紅林は
(…わかってるくせに
…そうやって逃げようとする)
恨めがましい目で美月を見て、身体を少し離し、目を合わせてもう一度言った。
「ここに来て、初めて美月を見掛けた時から…ずっと、美月に恋してた」
「…………………」
真っ赤な顔で告げられた内容に、衝撃を受ける。
紅林に、そんな感情を抱かれてるとは思いもしなかった。それは、関心も興味もなかった証拠だろうか…。
「なんだか中学生…いえ、高校生みたいな告白ですね」
「……………」
美月は、可愛げのない言葉しか返せない。
紅林は、顔を赤くしたまま
「…悪かったな。慣れてないんだよ…。こんな事、初めて自分から言ったんだから…」
「其にしても、順序が逆ですよね?」
「っ…それは、俺だって気にしてた…」
紅林に、優しく頬を撫でられる。
「俺は、他人や自分が思ってるより、大人じゃなかったんだ。…美月を好きになってそれが思い知らされたよ」
「……………」
美月は、ただ聞いている。微笑しか出来ない。
自分の事で手一杯で、彼の気持ちを知ろうとも、気づこうともしなかった。
それを痛感されて、無性に泣きたくなる。
私はこんなにも子どもだわ。