第6章 噂の二人
そして図書室に来た。
ひどく緊張する。
深呼吸をして、中に入ると既に白河の姿があった。
「白河先輩…すみません。お待たせしました」
「ああ。大丈夫だよ」
白河の隣の席に着く。
「青野は早退したから」
白河はまだ美月が、保健室に居る気がするが、早退も同然なので余計なことは言わなかった。
「そうですか…」
「明日には、今日よりは元気になってると思うよ」
「そうなんですか?」
「なんとなくね…」
「はぁ…」
(なんかこう言われると、美月先輩と付き合ってるて納得しちゃう…お似合いだと思うし…)
「で。俺が青野の事を話したりすると、デキてるって言われるんだよ」
ギロリと夢を睨む様に見る。びくっとする。
「俺と青野が付き合ってるって噂は、信じてるの?」
「………………」
深呼吸をして、素直な気持ちをぶつける決心をする。握りしめた手は、震える。それでも、噂を鵜呑みにして、事実を知ろうとしないのは良くないと思うから。
「…実を言うと信じた半分、認めたくない半分でした…」
「認めたくない?」
「私から見ても二人はお似合いだから…でも、二人が付き合ってるて聞けば聞くほど、私…嫌だなって思ったんです…」
「なんで?」
はぁっと息をつき、吸う。
「私、美月先輩の事、好きです。恋愛感情かはわかりませんけど、白河先輩に美月先輩を取られたくないって思ったんです…でも…」
「でも?」
夢は顔を真っ赤にしながら、続けた。
「なんでか…わからないんですが…美月先輩に白河先輩を…取られたくないとも…勝手だって…自分でも…」
声が小さくなっていく。
なんでそう思うのか。
白河と付き合ってる訳でもないのに。
少しHな事をしただけ。
それだけで、思い上がってしまったのか。
とにかくこんな自分が、恥ずかしくて顔を両手で覆った。
そんな夢を無言で見つめ、口を開いた。
「それって…」