第6章 噂の二人
二人は、不機嫌な彼女を無視し、やりとりをする。
紅林は棚を漁る。
「遠野。さっさと帰れば?先生の邪魔もほどほどにしないと嫌われるよ」
「…っ!」
白河の言葉に、頭に血が上る。
「クソ野郎!」
通りすぎ様に、白河に吐き捨てた。
「みっともない女…」
白河の表情は冷たい。
「はい。レモン味だけど、いいか?」
ニッコリ笑って、のど飴を白河に渡す。
受け取った白河は無言で、紅林を見ていた。
「?」
「先生…何、生徒にたぶらかされてるんですか?」
「…っ!」
さっきの聞いていたのか…。まぁ、彼女は廊下まで聞こえる程に声がでかい。女じゃなかったら、一発殴っていた。(気分的に)
「あまり余裕ぶってると、とられますよ…」
「?」
「青野」
「!!」
「俺以外の男にね…」
それだけ言うと白河は去った。
はぁと思わずため息がでる。
見透かされている…。
時々、彼らの方が、自分よりも大人に見えてしまう。
実に情けない。
そんな思いをさせられるのは一人で充分だ。
ここにいない少女の姿を浮かべる。
最近、なんだか不快な噂が、出始めている。彼女は大丈夫だろうか。
いや…大丈夫じゃないな…。
あれから彼女は、ここに来なくなった。避けられているんだろう。ここに来る程、体調は悪くないんだろうが…まぁ、多少悪くても我慢していそうだ。
「さて、どうするか…」
一人呟いた。