第1章 始まり
同じく美月も、ふっと息を吐いた。
「まさか、あんな状況に可愛い後輩と遭遇するなんて思わなかったわ。」
「わ…私もですよ!」
「ふふ…その割には興奮してたみたいね?」
「っ!」
耳に息を吹きかけるように言われ、後ずさる。
「美月先輩ありがとうございました。おかげで出られました…」
真っ赤な顔を、ごまかすみたいに勢いよく頭を下げた。
「いいえ。お互い災難だったわね。全く…もっと注意深く、周りにも気を付けて欲しいものね。」
「…そうですよね。」
夢の心臓は、まだすごい音で、身体も熱いままだった。
美月も、読みたい本を探して、あの場に遭遇してしまったらしい。
(美月先輩…私の事、変態だと思ったかな…)
あの二人を見て興奮してた事。それを、美月にどうやら見抜かれている事が、夢を徐々に冷静にさせていった。
(美月先輩に嫌われたくない…けど…)
ちらっと、美月を見ると目が合った。
美月は優しい笑顔を夢に向けた。
じんと胸が熱くなった。
(だから私、美月先輩の事大好きなんだよね…)
どんな時も笑って許してくれる。いつだって、そんな美月に癒される。