第10章 加納
加納は夢へと振り向き、
「春川さん。いろいろと…悪かったわ」
「貴女の靴箱や机にいたずらしたのは…そこの二人とあと他の人達」
「加納先輩は…」
「私は、貴女に悪意を持ってるのを知ってて何もしなかったし、貴女に嫌がらせするように焚き付けたからその子らと同罪ね」
「……………」
加納が嘘を言ってる様には見えなかった。
「…どうして教えてくれたんですか?」
「だって気味悪いでしょ?自分に嫌がらせした相手を知らないままなんて」
「…………」
(もしかして…加納先輩も…)
似たような経験をしたのだろうか?だがそれを聞くのは躊躇われた。
「皆、貴女に嫉妬したの」
「加納先輩も?」
加納は無言で肯定した。
「どうする?」
「え?」
「貴女は自分をいじめた相手をどうする?」
突然、加納に聞かれ、夢は一瞬反応に困った。
「謝って下されば、それでいいです…あ、あと…もう二度とやらなければ…」
「先生には言わないの?」
「ちゃんと…謝って下さったから…」
夢は必死に言葉を探す。
「私…なぜか加納先輩は…信じられると思うから…」
夢の言葉を聞き、加納は頬をつねられたような顔をした。
「…貴女って甘いのか、強いのか分からないわね…」
ふぅっと加納は息をつく。
「どちらにせよ…」
落胆した表情だった。
「私とは…大違いね…」
白河と前園達は、黙って二人のやり取りを見ていた。
区切りが着いたのを確認して、白河は前園達を見やる。
白河の、催促する様な視線に居たたまれない二人も、加納に続く様に謝った。