第10章 加納
「じゃあ、もうこれで…全部お仕舞いでいいよね?」
白河の言葉に加納は頷き、二人は俯いた。
「春川さん、立てる?」
「あっ…はい」
夢は立った瞬間、ふと加納と目が合う。
「……………」
加納は夢の目を見て、白河を見た。
「白河君」
「ん?」
白河は、加納の方へ振り向いた。
白河が此方を見たのを合図に
(最後に言わせてね…)
「私、白河君が、好きだった…」
「………………」
加納は敢えて、”だった“を強調した。
もう過去にすると宣言する様に。
「…うん。俺、加納のそういう潔さ、結構尊敬してる」
「…………そう」
白河の言葉に加納はそっと笑う。
(ごめんでもありがとうでもない返事…)
(貴方らしい…)
(最初から決めてたの)
(白河君が気付いたら、潔よくすると)
(彼が誉めてくれた)
(私の、きっと唯一の長所)