第11章 カミュ×妻子
パチパチと
拍手が起こる。
それがなりやむまで待ち、
深く深呼吸をする。
シーン…
「俺は、皆に黙っていたことがある。」
え、?なになに?
なんて、ボソボソと聞こえる。
「俺は、本当は
祖国に、大切な妻と息子がいる。」
…………
会場がシーンと静まり返り
俺の次の言葉を待つ。
「……黙っていて本当にすまない。」
俺は目一杯頭を下げる。
え?、本当?
などとざわつく会場。
「だから、俺は
謝罪の意味を込めて、
今日、引退する。」
その一言で会場が
ワーーッ!!!!と騒がしくなる。
泣いているものもいる。
怒っているものもいる。
それでも俺は頭を下げ続けた。
「えー、
ここで、中継先に着いたセシルに
繋いでみます。」
寿が俺の肩を
がっしりつかんで
よくやったとでも言う風な
眼差しをむけてくる。
俺もコクッと頷く。
そして、モニターに向き直る。
「………は?」
俺は驚く。
縁の地って、
そういうことか。
いや、でも
まさか
白い廊下を歩いていく愛島に
息をのむ。
何をしてる。
やめろ。
映すな。
○○を、シヲンを
巻き込みたくはないぞ。
ガラガラと扉を開き、
見覚えのある病室が映る。
「何をしている。
寿、やめさせろ。
おい。」
寿につかみかかるが、
寿は
「…ミューちゃん、
大丈夫だから。
自分のファンを信じなよ。」