第11章 カミュ×妻子
「カミュさん、
スタンバイでーす。」
こんな声が聞こえてから
立ち上がると
~♪
携帯がなる。
急いでメールを開くと
"パパ
がんびれ!"
少し間違っている短文と
女と子供が写った写真。
そこに写るのは
俺の妻である○○と、
可愛い息子のシヲンである。
二人は祖国に残してきた
愛しい家族。
俺は体の弱い妻のために
日本にまで来て働いている。
俺の職業はアイドル。
日本では妻がいることは
秘密だ。
**
少し妻の話をしよう。
俺の妻は日本でいう"結核"
という病気らしい。
平気な日は割りと元気だが、
スゴい日は咳が止まらず、
緊急搬送されるなんてこともある。
俺の祖国では
残念ながら完治の方法はなく、
いつもベッドで安静にしているのが日課だ。
息子が産まれてすぐに
その病気になってしまったため
息子とはほとんど遊べていないそうだ。
そのかわり、
色々と本を読んでやってるみたいだがな。
俺がこの通り日本にいるから、
せっかく結核がなおせる日本にも
そう易々と呼ぶことはできない。
アメリカやヨーロッパにも
恐らく医者はいるが、
あまりに遠くになられると
かえって心配になるし、
いまいち
一歩が踏み出せないまま
ずるずると今日までやってきた。
そろそろ
○○の体を思って引退でもすべきかな…
バレたら引退にするか、
いや、しかし、
週刊誌にこいつの顔が写りでもしてみろ。
違う意味で命が危ない…
ここは、アメリカに…
でも、それではシヲンも可哀想か…。
俺は
このままいるか、日本に移住するか、
欧米諸国に移住させるか
の3択でかなり悩んでいた。