第31章 セシル×OL
その瞬間…
「にゃぁお……」
窓の方から猫の鳴き声が聞こえた気がした。
すると、
ふわぁ…っと、懐かしい香りに体が包まれた。
私はすぐにその正体が分かった。
『っ、ぐす…セシル…く』
「…○○…スイマセン、
遅くなってしまいまシタ…」
なんで?
私、沢山セシルくんのこと傷つけちゃったのに…
私をグイッと自分の方に引き寄せ、
一ノ瀬くんから引き離したセシルくんは
驚くほど穏やかな笑みで私を迎え入れてくれた。
「な、なぜ、貴方がここにいるのですか?」
少し動揺している様子の一ノ瀬くん。
「スイマセン、あれから二週間
二人を尾行していまシタ。
今日の会話も聞いてしまいまシタ」
『え?…』
じゃあ、セシルくんは
私に呆れて去って行ったわけではないの?
セシルくんの顔をジッと見ると、
「そんな不安そうな顔、
しないでくだサイ。
ワタシはもう貴女から離れナイ…」
そう言って頬に
軽く触れるだけのキスをされる。
『〜っ///』
顔がみるみる赤くなっていくのが
自分でもわかる。
「私の時はそんな顔…」
そして、目の前の一ノ瀬くんから覇気が無くなる。
『一ノ瀬くん…』
「イチノセ…○○はワタシのパートナーです。
ワタシの○○を傷つけるようなコトをしたのは
許せませセン…
でも、魅力的すぎる○○に
心を惑わされるのも理解できマス…
ダカラ…」
そう言うと、
一ノ瀬くんから目を離さないよう威嚇しながら
私を抱きしめる手に力を込めたあと、
「諦めてください…
彼女はワタシの大切な人。
ホントは貴方を殴って埋めてやりたい…
でも、そんなこと…
彼女が望まないから…
彼女に今後一切近づかないと
今ここで誓ってくだサイ。」
と、きっぱり言い放った。
『……///』
うわぁ…どうしよ、
こんなイケメン同士に争われて、
私が好きな人が
自分のことも好きなんて…
夢みたい…///
て、そんなこと考えてる場合じゃない!
一ノ瀬くん…
先程から一言も発さず、
私たちの様子を睨みつける一ノ瀬くん。
ゾクッ
背筋の凍るような先程までの雰囲気を思い出し、
ツーッと冷たい汗が頬を伝う。