第31章 セシル×OL
○○side
『はぁ……』
最低だ私。
セシルくんを傷つけちゃった。
春歌ちゃんにすら紹介できないなんて、バカすぎる。
セシルくん、一言も話してくれなかった。
どうしよ…こんなオバさんにコケにされたことを恨んで………
って、セシルくんはそんな子じゃないよね…
「どうしました?
昨日の今日で。」
デスクでぐずぐずする私の顔を覗き込む一ノ瀬くん。
『……ううん。
セシルくんのことで….ちょっと…。』
と、うつむく私に一ノ瀬くんが耳元で
「今日、送ってあげますから、
少し待っていてください。」
と、囁いた。
『……うん…』
**
カツ…カツ…
コツ……コツ……
人混みのなか、
ヒールの音が嫌に頭に響いて
周りのガヤガヤとした話し声が頭にボーッと入ってくる。
一ノ瀬くんの気遣いで少し遠回りをして帰る
いつもは通らない飲み屋街。
学生とサラリーマンとOLで賑わっている街の中を静かに歩き続ける。
一ノ瀬くんは私から話し出すのを待つかのように黙っているままだ。
少しして、ようやく私に話す決心のようなものができ、
『あのね…』
今日のお昼のことを全て一ノ瀬くんに話した。