第31章 セシル×OL
『うん。大丈夫だよ!
それじゃ、行こっか?』
ピシッと上着のシワを整えて
片手を差し出すと、ギュッと握ってくれるセシルくん。
「ハ、ハイ…!!」
と、その手を握って緊張してるのが手から伝わる。
『ふふっ、あ、そういえば…
音也くんたちはいいの?』
2人で肩を並べて歩く。
「ハイ。
オトヤたちは食堂で、…って、
オトヤ…知っているのデスか?」
『あ…うん。そこでバイトしてるじゃない?』
「あ…ナルホド…」
なんて会話をしながらカフェに向かう。
笑いながら会話していたけど、内心 宇野ちゃんと呼ばれる子と、セシルくんの関係性が気になって穏やかではいられなかった。
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カランカラン…
レストランに着いてもそんなことばかりを考えてしまって
セシルくんの話がほとんど入ってこなかった。
そんな私の様子を見て
セシルくんが何かを言いかけて唇を噛み締めたことに
身勝手な私は気がつかなかった…
「いらっしゃいませー!って、あれ?
○○さん、その方は…もしかして、彼氏さんですか?」
ドキーッ
いつものようにキラキラな笑顔で
私を迎えてくれる春歌ちゃん。
私に期待の眼差しをむけるセシルくん。
でもバカな私は
『ち、違うよ!
し、親戚の子で、お昼でもどう?ってなったから…』
って、嘘をついてしまった。
「そ、そうなんですね…
すいません、私、勘違いしてしまって;;」
『ううん、こちらこそ、
紛らわしい感じでごめんね…』
「っ…」
焦る彼女に
罪悪感を感じながらも、
セシルくんのことが気になってしかたなかった。
(怒ってる…よね…)
それきり口を閉ざして曇った顔で
春歌ちゃんに案内されるがまま
いつもの特等席に座る。
『ふたりとも、今日のオススメで』
「はい。」
明らかに入った時より雰囲気の悪くなってる私たちの様子を気にかけながらも厨房の方に向かう春歌ちゃん。
(気を使わせちゃってゴメンね…)