第30章 レン×吸血鬼
ゾクッ……
吸血鬼はそれだけ言って
この場を去っていった。
(あの飲み物…あいつの血…だったのか…
じゃああの匂い……)
「ゔっ……ゔぅ…」
最悪な気分だ。
あんな変な男の血を飲んで、
レディを殺されて…
俺はこの苦痛の耐え方がわからなかった。
**
暗い部屋に月明かりだけが照っている。
ベッドにそっとレディを寝かせて布団をかけてあげる。
「○○……俺はこの先どうすればいいのかな…
あのジュースに頼る気も
他の女性の血を飲む気にもなれないよ…
……こんなことなら…いっそ……」
(出会わなければ…っ!!)
彼女の手を握って額に当て、また溢れてくる涙を必死にこらえて、声を殺しながら泣く。
「っ……っ…」
すると、
ピクッ…
彼女の手が動く。
「!?!?!?
レディ!?!?…今…」
『ん……っ…
レ…ン……??』
そして、その綺麗な瞳をゆっくりと開く。
「○○っ……!!!」
俺は彼女の顔を覗き込む。
『へへ……私、都合のいい夢…見てる?
死んじゃったの…⁇』
彼女は微笑みながら覗き込む俺の頬に手を当てる
「っ……ううん…」
俺はその手を握ってまだ虚ろ目な彼女にフルフルと首を振り
そっと額同士を当てる
『ふふっ……レン…??
泣いてるの?』
からかうような言い方だけど、
優しい瞳には涙が溜まっていた。
「ごめん…レディ……ごめ…」
そんな彼女を見て俺はまた涙をこぼしていた。
『レディじゃなくて…ちゃんと名前で呼んで…』
月明かりに照らされている彼女の瞳は
今までで一番強く輝いていた。
俺は彼女の頬に触れて…ゆっくりと顔を近づけて…
「○○…好きだよ…愛してる…」
ちゅ…
キスをした。