第30章 レン×吸血鬼
セシルさんの只ならぬ雰囲気に、私も立ち上がってなるべくゆっくりと彼と距離をとる。
近づいたらダメな気がする。
…それに…私の秘密って…
「その顔は…アナタもまだ秘密に気づいてない…ようデスね…。」
『わ、私の秘密…』
(………まさか……ね…)
「ハイ。……貴女には重大な秘密があるのデス。」
それからもジリジリと私に詰め寄るセシルさん。
『っ、来ないで!!!』
だけど、こんなセリフは何の役にも立たない。
トン…と背中が壁についたとき、
私は寝室まで逃げてきていた。
寝室の出入り口の直線経路はセシルさんに塞がれ、
右手にはベッド、左手は壁だった。
(最悪…。
これから、私はどうなっちゃうんだろう…。)
私は逃げきれないと頭で分かりながらも
ベッド側に素早く逃げようとした
だけど…
ガシッ
腕を引っ張られ、
ベッドに押さえつけられてしまった。
『っ、…離してっ、
離してくださいっ!!!!』
(どうしよう、どうしよう…
レン……まさか、レンも私みたいに、こいつに…??)
脳裏に良くないことばかりが浮かび
頭の整理がつかなくなる。
「離しまセン。
アナタの血をいただくまでは。」
『え………』
フッと真後ろ…いや、脳に囁くようにして聞こえたその声にはどこか聞き覚えがあった。
"ありがとうございまシタ"
私は思い出した…彼があのレストランの店主として
あのジュースを私に売ってくれたことを
そして、レンも初めて会った時こんなに光る目をていたことを…
逃げようとする私を後ろから羽交い締めにし、
無防備になった首筋に後ろからカプッ…と噛みつかれる。
『レン…レン…助けてっ!.!
誰かっ!!
レンっ!!!!!!』
「あまり、暴れないでください…
歯が食い込まない…」
『誰が大人しく殺されるもんかっ!!
このっ!!離せっ!!!』
なるべく大きく暴れて時間を稼ごうとする。
レンが助けに来てくれることを願って。
「チッ……早かったデスね…」
ゴンゴンゴン!!!!!
その瞬間、懐かしい気配を扉の後ろに感じた。