第16章 真斗×花魁
俺は、
「迷惑ではない。
俺は…お前が無事なら、それでいい。」
ギュウッと強く抱き締めると
それに応えるように
抱きしめ返される。
『私…自分が、情けない…』
「……」
それから語られた
あいつとの過去、
今日のこと、
腕の痕。
俺はそれを全部受け止めて
抱きしめていた。
俺は彼女に2度と
こんな思いをさせたくない。
そして、、
**
○○side
スーッと襖が開いて
林檎お兄様が入ってくる。
「……今日は新規のお客様が
来られるわ…
慣れないこともあるかもしれないけど、
頑張りなさい。」
『はい。
……って、それだけ?』
「え?」
『それだけ言いに来るなんて、
どうかしましたか?』
私は少し様子のおかしい
お兄様に問う。
「実は……」
**
『……』
なんで、
なんで何も言わずに…
私は宴会場に向かいながら
怖い顔をしていた。
原因は林檎お兄様のいっていたこと。
「番犬くん、昨日付けでやめちゃったの。」
……なんで……
もう、お昼もお話できないの?
助けてもくれないの?
涙が溢れそうになってやっと気づく。
私、あの人が好きだったんだって。
こぼれそうになる涙を必死にこらえて
芸者たちが
並んでいる部屋へ
入っていく。
俯いた私には
お客の顔なんて目に入らない。
『高尾太夫です、
よろしくお願い致します…』
すっと
顔をあげると