第16章 真斗×花魁
聖川side
この距離からなら
彼女だけでも
救出させられる。
でもその場合
後ろの扉から
逃げられる…
どうする…っ!
俺は限界に近づいている
太夫の様子に
救出作戦に出た。
ばっと走っていって
男の目の前に刀を向け
手を緩めたところを
助け出す。
それから、
逃げる男を追ったが
逃げ足のはやい男で
追い付けなかった。
「クソッ
見失ったか…」
曲がり角だらけの構造を
逆手にとられ、
まんまと逃がしてしまった。
少し探していると
「クソッ!!!
離せっ!!!」
男の声がする。
そちらへ走っていくと。
「離すかよ!!!
お前には聞きたいことが山ほどある。
とりあえず、こっちへこい!!」
龍也さんが男を連行しているところだった。
俺を見つけた林檎さんが
近づいてきて
今回のことについて
話をしてくれる。
「どうやら門番の目を盗んで
部屋に侵入したみたい。
当時の高尾太夫のファンなのよ。
あいつのことは
私と龍也でやっておくから
あの子のところへ
いってあげて?」
「はい。」
**
「高尾様っ!!!」
ビクッ
高尾太夫は一瞬体を震わせて
こちらにゆっくり振り返る
『聖川さん…』
「首…大丈夫か?」
『……えぇ。
……ごめんなさい。
迷惑をかけてしまって… 』
彼女は拳を強く握って
肩を震わせていた