第16章 真斗×花魁
幸い、客も店の者たちも
○○のことを理解してくれる
人が多かったし、
俺たちも
あいつを守ってやれる立場になった。
だから徐々に回復してる…
もうあいつを
傷つけるまねはさせないさ。
***
番犬となって一週間がたった。
まだ昼と夜が逆転する
生活になれなくて
俺は起き上がって
広い店内を散歩することにした。
「それにしても、
思っていたより
広いのだな…」
石ころを蹴りながら
庭の方を歩いていると
石が誰かの足元にころがっていった。
「あ……」
『……あのときの…お侍さん…??』
そこには
縁側に座って
庭の池を眺める太夫がいた。
俺のことを知らされていないのか
なぜここに?
といった顔をしている彼女。
「あ、いや……
ここの番犬をいいつかってな…
今はここで雇ってもらっている…」
『……まぁ、そうでしたか……
あのときは本当にありがとうございました。
その……泣いちゃったときも…//』
少し恥ずかしそうにする彼女を
可愛いなどと思ってしまう。
しかも、
化粧などで着飾っていない
太夫はなかなか新鮮だった。
「いや、かまわん。
となり…座っても?」
『ええ。どうぞ。』
にっこりと
笑ってくれる。
俺は彼女と
昼間、度々二人で話をするような
関係になった。
**
太夫を襲う客も大分いなくなり、
俺も仕事に慣れてきた頃だった。
事件が起こったのは。
俺は門番に少しの間
交代をたのんで
厠で用を足していた。
今日も話ができた…//…
一人で喜びを噛み締めて
厠から戻ると
座敷に誰か入ったようで
襖が閉まっていた。
「すまんな…」
俺は門番に礼を言って
再び交代。