第1章 初めての彼女//黄瀬
一人暮らしって憧れる。
俺も大学に入ったら、一人暮らしをしてみたい。
そう思っていたから、一人暮らしの部屋を見に行ってみたかった。
「じゃあ、来週の土曜に真奈美んち行くから、住所メールしといて欲しいっす」
「はいはい、わかったよ。じゃぁまたね」
真奈美と別れ、家に帰る。
風呂に入り、部屋の扉を開けたところでケータイが鳴る。
確認すると、真奈美から住所のメールだった。
「楽しみっすー!」
じゃあとりあえず今日は早めに寝よう。
そう思って、ベッド入った。
土曜。
ようやくこの日が来たっす!
真奈美の家は電車で一時間くらいのところだった。
実家からだと大学まで一時間半くらいかかるらしい。
真奈美とは駅で待ち合わせだった。
「涼太!」
「あ、真奈美おはようっす!」
「相変わらず目立つね。周りの女の子たちからの目線が痛いよ」
そう言って苦笑する真奈美。
「俺も罪な男っすね!」
「はいはい。じゃぁ行くよ」
こっち、と手招きしながら歩き出す真奈美。
その後を追いかけ、五分程歩いたところに綺麗なマンションが建っていた。
「ここだよ」
「へぇー綺麗っすね!」
「そうだね、新しいみたいだから。言っとくけど、何もないよ?」
「大丈夫っす!真奈美んちでゆっくりしたいっす!」
「あ、そう」
俺たちはエントランスに入り、エレベーターに乗り込む。
5階のボタンを押すと、エレベーターが動き出す。
俺は少なからずワクワクしていた。
別に特別何かあるわけじゃないんだけど、一人暮らしの部屋に行くってだけで楽しい。
部屋の前に着くと、真奈美は鍵を開け、ドアを開く。
「どうぞ」
「お邪魔するっす」
真奈美の部屋は白が基調の落ち着いた雰囲気だった。
一人暮らしにしては比較的広めに見えた。
俺はソファに勝手に座る。
「綺麗にしてるんすね!」
「そう?普通の部屋でしょ」
今飲み物持ってくる、と彼女はキッチンへ向かう。
辺りを見回し、俺も早く一人暮らししたいなと胸が高鳴る。
それと同時に、今、真奈美と二人きりだということに気がついた。