第1章 遅刻常習犯
「ライ〜〜まだかあ?」
ドンドンと扉を叩くも中から聞こえてくるのはもうちょい、あーうんという寝ぼけたような生返事ばかり。
時計の針は9時05分。
結局遅刻じゃねえか…!!!
「クザンーできたよー」
やっと出てきたと思えばライの白い髪は寝癖だらけ、服もしわくちゃでとても会議に出れるような格好ではない。
寝起きバレバレだ。
「これだからこの小娘は…!」
クザンはライを洗面台の前に座らせると手際よく髪を整え、服のしわを伸ばし、ベッドの上に放置されていた海軍将校の象徴であるマントを羽織らせた。
「はい、これでOK。いい女になったじゃないの」
「マント邪魔…歩きにくい…戻りたい…寝たい…」
小柄なライには支給されるマントは大きすぎらしく、ズルズルと引きずってしまっている。
…普段はめったに羽織らない為気付かなかったが。
「ほらさっさと行くぞ」
ライの手を引っ張り走り出すが、
「おわあっ!!」
突然クザンが後ろにのけ反る。
ライがマントを踏んで転けそうになったところをクザンのマントを掴み、間一髪助かったのだ。
「クザン、このマントやっぱいらないって、うわ!」
またライが駄々をこねだす前に最終手段でお姫様抱っこをし、急いで会議室へと向かう。
「落としたら死刑」
「お姫様は黙って捕まってなさい」
バン!と勢いよくドアを開けた。
「おはようございまーす」
ライが悪びれもなく気の抜けた声を上げると、一気に視線が集まる。
「…クザン、何しとる」
センゴクが呆れたように問いかけ、またかと言わんばかりに時計を見た。
15分遅れ。まあそもそも参加しなかった前回に比べればだいぶ上出来だ。
グッジョブオレ。
「あ〜、ライのマント、小さいやつにしてやってください」
「?…わかった、後で伝えておこう」
よっ、とライがクザンの腕から飛び降り椅子に座ると、クザンも続いて隣に座る。
「やっと揃ったな、では会議を始める」
こうして海の平和を守る会議は定刻遅れで始められた。