第3章 第一次14日戦争
2月14日はバレンタイン・デー。
…それ自体思い出したのは今朝だが、ライはこの行事を知ってから毎年何かしら手作りのお菓子をくれていた。
見た目は悪いが「食えば全部一緒」と言い張り、確かに味は美味いそれを今年も作ったらしい。
「今年はパウンドケーキだよ。美味いっしょ?」
…おれにくれる気はねえみたいだがな。
「ライちゃん〜〜?」
「せっっっっかく徹夜で焼いたやつをあげようと思ったんだけどさあ?」
おれが起こしに行ったら既に身支度が終わってたのはそもそも寝てなかったからか……。
「今日センゴクさんに頼んで非番にしてもらってたのにさあ?」
「…ああ〜悪かったよすまん」
拗ねたように怒るライの頭を撫で、膨らませた頬をつねるとちょっとニヤっと笑いしょーがないなあ!!と目を輝かせた。
透明の袋に入れられたチョコレート色のパウンドケーキは、去年のクッキーに比べたらうんと整った形で、見た目もかなり美味そうだ。
「ハッピーバレンタイン、クザン!」
「ありがとな〜」
一口かじると、
…………美味い。
めちゃくちゃ美味い。
ビターチョコだろうか。甘過ぎず、程よいチョコレートの風味にしっとりしているがフワフワの食感。
「…美味えな」
「本当!?良かったあ〜〜」
ガープさんもいつの間にか煎餅を食べていた手を止め、「これがパウンドケーキか!!美味いのう!!」とガツガツ食っている。
女っ気がほとんどない海軍ではバレンタインなんて無縁だと思っていたが……そうでもなかった。