第1章 遅刻常習犯
コンコン、とドアをノックする。
「おーい、ライちゃーん?」
中からは当然返事はなく、物音もしない。
(参ったな…)
入っても良いものか、と少し考えるが会議まで残り10分を切っている。
やむなくクザンはドアを開き、暗い室内へと入った。
「ライ、起きろ」
隅にあるベッドで誰か寝ているのがわかる。
クザンが声をかけるとモゾモゾと動き、背を向けるように寝返りをうって布団の中に沈んでいった。
「おいおい無視かよ…今日は会議の日だって言っただろう、おつるさんに怒られたくなきゃ起きろー」
…。
…。
まっっっったく起きる気配が無い。
ついにクザンは布団を剥ぐと寝ていたライを抱えて起こした。
半分しか開いてない赤い眼をこすり、ふああと大きなあくびをする。呑気なものだ。
「ん…クザン…、おはよー…」
「おはよーじゃねえよ、ほら、会議まで10分切ってんぞ」
「会議…?………あ、あああああああっ!!!」
やっと意識が覚醒したのか大声を上げて焦り始める。
「あああ…。……。………もう間に合わなさそうだし、行かなくても別に良くない?」
だからこいつは…!
クザンは今日こそは負けまいとライと同じ目線までしゃがみ、説得を試みる。
「あのな?ライ。この会議は大事な会議なわけよ。お前は仮にも少将なんだから、会議くらい出なきゃいけねーの」
もう一度あくびをし、ジロリと不満げにクザンを見る。
「そんなこと言って、結局はおつるさんに怒られるのが怖いだけだろ」
ギクッ。
「あらら、んー、まあな。おつるさんにに捕まったら3時間は正座のまんま解放してもらえねーぞ?」
「嫌だ…」
「ほらほら、着替えて」
嫌だーーーとゴネるライの服を出し、持ってきたパンを食べさせ、顔を洗わせ…って俺は母親かよ。
「着替えたら出てこいよ。外で待ってるから」
そう言ってドアの外で待つことにした。