第6章 正体の段
大川はオホン!と区切りの咳払いをし…
「さて、お主の目的と正体は分かった。……依頼は何処じゃ。」
大川の言葉にクスッと軽く笑い
「たとえ忍術学園の学園長だとしても、その質問には答えられない。」
ふと上を向き、天井を見上げる。
「変装を解いた私だよ?余計に気配は分かる。出てきなよ!意地が悪い。」
その言葉と同時に部屋に降りてきたのは…
「まさか、君が刺客とはね。彩也」
山田 利吉だった。
「この姿でその名前を呼ばれるとはね。利吉さん。」
「利吉!?知り合いなのか?」
「えぇ…父上。」
(へぇ…親子なんだ。確かに似てる。)
利吉さんと髭の男、父なら山田という苗字だろうと思いながら2人を見る。
利吉さんは話を続けた
「彼…失礼……彼女とは昔に何度か…」
「会ってる。といっても戦場とかでだね。」
「そうだな。本当に彩也なのか?」
「そう思うのは当たり前だよね。」
「利吉くん。」
「はい、学園長先生」
「利吉くんはこの者…彩也というのかな?……女と知っておったのか?」
「いえ、女装が完璧な忍と思ってました。いつも男の姿なので、この姿は初めて見ました。」
利吉さんの改めての驚いた様子を見て
ふぅ…と一呼吸置いて、着ている桔梗色の装束を見下ろす。
「まぁ、色々あるけど素で忍装束なんか着たくないもの。…………あっ……」
ふと自分でも気付くのだから、他の5人も気付いた。
「き、君……声……」
さっきから黙っていた土井先生が言った通り
起きた時に比べて、女の声になったのだ。
「これで、完璧に女ですね。」