第3章 それぞれの段
前を見ると、半助さんが真剣な顔で見つめてくる。
「何かあったら、手紙を寄越しなさい。この家にはなかなか帰ってこないけど、手紙くらいなら取りに行けるから。」
「あら、それは頼もしいわ。」
フフッと笑ってみせても、半助さんの真剣な表情は変わらず…
私は一呼吸置いて
「この世の中です。いつ自分の命が危うくなるか分かりません。」
「彩さん……君の仕事はそんなに危険なのか?」
心配をする半助さんに苦笑しながら首を横に振るう
「こんな娘に危ない事を頼むと思いますか?仕事を終えて落ち着いたら手紙を出します。約束します。」
ギュッと自らの拳を握る半助さんの手の片方を両手で触れて耳元へ近寄り
「傷のことはきり丸君には言わないで下さいね。心配かけたくありませんから…」
「約束しよう。」
半助さんの言葉に微笑み、離れて一礼する。
それと同時にきり丸君が出てきた。
「いってらっしゃい!!彩さん!!」
手を振るきり丸君と頷く半助さんに頭を軽く下げ
「いってきます!」
久しぶりに言ったかもしれない言葉を発した。