第2章 平和の段
「ただいま戻りました。」
彩が半助の家に入ると、シーッと人差し指を立て静かにと仕草を見せた半助がいた。
傍には…
きり丸が子守のバイトで預かった赤子達がスヤスヤ眠っていた。
咄嗟に口を手で覆い、同じく人差し指を立ててシーッと仕草を彩もすると
半助は少し驚き二人して静かに笑った。
きり丸は別のバイトで出ているらしく、半助と彩は中庭に出て丸太椅子に座った。
「気持ちよさそうに寝てますね。」
「えぇ、やっと寝てくれて一安心です。」
苦笑する半助にクスクスと笑う彩
「どうです?此処の生活は慣れましたか?」
「えぇ、すっかり。半助さんときり丸君のお陰です。」
「それは良かった。ずっとこうしていたい位ですよ私は。」
伸びをしながら言う半助に対して
「こんな生活、ずっとなんて叶えてくれるのかしら。」
半助はその言葉に、え?と言うと彩は慌てて何でもと言い直す。
二人が沈黙した時
風が二人の後ろから吹いてくる
彩は左手で髪を耳にかけた時
半助は目を疑い、咄嗟に彼女の左手首を掴んだ。
「彩さん。これは!?」
袖から見えた手の甲の傷を見た半助は彩を見つめると、バツ悪そうな顔しながら
「昔に負った傷です。痛みなんてありません。すみません。お見苦しものを…」
手を引こうとする彩を離さず
半助はもう片手で彩の頭を撫でた。
「見苦しいわけないだろ?そんな事を言うもんじゃない。負ったモノでも貴女の身体に何も無いなら、私は安心だよ。」