第8章 年下の新しい恋人
「あれ、二人してこんなとこで何してるんスか?」
クロの背後からの声に慌てて身体を離す。
「なーんだ、今日はクロさんと約束してたんスか……」
「あ、う、ううん……リエーフこそ、どうした、の?」
「あれ、LINE送りましたよ」
「ごめん……まだ見てない」
「ひどっ、てか、今日来ていいか訊いたけど返事ないからまあいいかと思ってきたんですけど……邪魔でしたか、俺?」
「あ、別にそういう、」
「邪魔」
硬いクロの声に遮られる。
リエーフを完全拒絶するような声。
「おまえ、邪魔。帰れ」
「クロさんに聞いてません!」
いつもとは違うクロの冷たい態度に、リエーフも眉根を寄せる。
「クロさんこそなんなんですか!?」
「あ?」
「彼女とは終わったって聞きましたけど?」
「勝手に終わらせんな」
「セフレやめたんですよね? 俺、知ってるんですよ!」
「セフレとしては終わったけど、男としては終わってねぇんだよ」
「なにそれ、何が違うんですか!?」
「ガキにはわかんねぇよ」
「なんなんですか、クロさん!」
リエーフの声が尖る。
初めて見る、リエーフのイラっとした顔。
怖い。でも、クロの顔も怖い。
「あ? つか、こいつは俺のモンだから触んな」
「はあ? 何言ってるんですか。最初に手放したのクロさんじゃないっすかっ!」
「だから取り戻しにきたんだよっ」
「一回手放したらもうアウトだろっ」
「ちょっと、やめてっ…」
クロに掴みかかる勢いのリエーフを止めようとしたら、
「来いっ」
強烈な力で引っ張られた。
「ちょっと、クロっ……」
そのまま部屋へと歩き出すクロに引きずられながら、とっさに振り返る。
リエーフの険しい灰色の瞳と視線が絡んだ。
「……ごめん」
「…ごめんって、なんなんですか、それ……」
信じられないものを見てるみたいな顔。
「ごめっ……っ!」
言いかけた私の口をクロの手が塞ぐ。
なに?
「ん……」
「喋んな……減る」
片方の手で口を塞がれたまま、もう片方の腕で半分抱えられるようにエレベータに押し込まれる。
勝手に私のカバンを開けて鍵を探り出す手つきが焦ってる
。
乱暴に鍵をあけて中に入ると、手で塞がれてた口を今度は唇で奪われた。
乱暴に舌が捻じ入ってくる。
「んっ……」