第10章 番外編 夜久side
リエーフにしては珍しく食い下がってくる。
「おまえ顔綺麗なんだし、女なんて沢山寄ってくるだろ」
「そうだけど、そういう問題じゃないです!」
否定はしないのか、こいつ。
「俺、初めてだったから……」
「は? 初めてって……」
「彼女が、初めての相手で……」
「筆おろしを彼女にしてもらったってことか?」
「そういうんじゃないですって!」
「いや、そうだろ」
「違います!」
全力否定されても、そうだろ……
なんか、いろいろとあからさますぎるじゃん、これ。
「だから忘れられないっす」
おいおい、クロ
お前はなんてことしたんだよ……
クロはリエーフに初めての甘い味を味あわせておきながら、それを自分の物だからと取り上げた……ってことか。
「ひでぇヤツだな」
「彼女はひどくありません!」
「違うって、クロだよ」
「ですよね、そうですよね!?」
さすがにちょっとだけリエーフが可哀想だ。
でも、こればっかりは仕方ない。
だって、その彼女だってクロを選んだんだから。
「じゃあおまえ、クロに仕返ししてやれよ」
「どうやってですか?」
「だからクロよりバレー上手くなって、誰もが認めるすげぇエースになれよ」
「それが仕返しですか?」
「そしたら、その彼女だっておまえのこと見直すかもしれないだろ」
たぶん、ないとは思うけど。
「そしたらクロからその子奪い返せんじゃん」
「おお! 名案っす」
単純。
でも憎めない。
結構期待もしてる。
この大型新人がどれだけすごいヤツになるのか。
「夜久さん、ありがとうございます! 夜久さんって背は小さいのに頼りになりますね!」
「……」
ボコッ。
「いたっ、なんで尻蹴るんですか、褒めたのに、俺」
褒めてねぇし。
おまえのそういうところがクロに絶対勝てない要因じゃないのか……?