第6章 年下の強引なカレ
「……ぼ、くと……?」
「本気で、後悔してる、別れたこと」
「それは、木兎がっ、」
私じゃなくてもよかったから。
ただセックスできればいいって言ったから。
「俺が悪い。俺がすげぇ悪かった。なんかガッついてばっかで。てか、節操なし。それはちゃんとわかってる……でもなんか、この前久しぶりに抱いたら、やっぱ俺こいつのこと好きだって実感したっていうか、昔はガキだったって自覚したっていうか……」
「ガキって、1年しか違わないけど……」
「バッカ、2年と3年じゃ全然違うんだよっ、高校生の成長舐めんな」
腰に手を当てて踏ん反り返り気味に言うドヤ顔は、やっぱり憎めない。
木兎を本気で嫌いな人はいない。
我が儘だけどストレートで、嘘のない人。
性欲にも嘘がない。
ヤッてるときは、本気で相手のことが好きって自分で思い込める人。でもそんな「好きな人」が木兎にはたくさんいる。
それだけのことだった……
それはわかってる。
でも……
「黒尾のこと、本気で好きなのか?」
「え……」
「マジで黒尾のことが好きで、今、あいつに満足してるなら、しょうがないって思う。なんかいろいろ浮気っぽいことしておまえに捨てられたのは結局俺だし」
「捨てた、って……そんな……」
「捨てたジャン。俺に我慢できなかったんだろ? いや、俺でもあの頃の俺、我慢できなかったと思うし」
「木兎……」
なんか、変わった……?
「てか、あの頃、すげぇ赤葦とかに怒られた。つか、チームみんなに何やってんだって飽きられてさ」
クロのこと、好き。本気で、好き。
でも、だから苦しくて、逃げ出したいのも事実。
「少しでも迷ってんなら、俺にしとけって!」
な、と明るく肩を叩かれて、何も言えなくなる。
「つか、……」
木兎がいきなりがばっと頭を下げた。
「……っ!」
「よろしくお願いしまーっすっ!!!」
離れてこちらを見てた3人が怪訝な顔をしてる。
「木兎さん……試合でもするんですか?」
「ツッキー、人生はいつでも試合だ!」
「……」
メガネくんの呆れ顔の横で、クロの不機嫌そうな顔が私を見てる。
その不機嫌な理由はなに?
セフレを取られるのがイヤだから?
それとも……
ねえ、何か、ちょっとでいいから……期待させてよ。