第6章 年下の強引なカレ
横の道から出てきた人が、脚を止めた。
「おー、何、コンビニ?」
「っす……じゃんけんで負けて」
不服そうな仏頂面が、ちらりと私を見る。
黒い髪に意志の強そうな瞳。
「黒尾さんは……、あ、の、……」
「あ、俺とは会わなかったってことで」
「は?……あ、はい、…いえ……」
「どっちなんだよ」
「っす……でも」
眉根を寄せる顔が迷ってる。
このままクロの言うとおりにするのか。
それとも、もう一言……
「どこ、行くんですか?」
「ホテル」
「ホテ……え、あの……っ」
ストレートな答えに、一気に顔が赤くなった。
表情のうすい顔に感情が走る。
クロみたいに何でもそつなくこなせないタイプ。
木兎みたいに何にでも100%力をそそげない。
不器用なタイプ。
「あ、そうだ、お前も来いよ」
「は……?」
「どーせ帰ってもヒマだろ」
「クロ、ちょっと!」
もう二度と人前とか3Pとかクロ以外の人なんて、イヤ。絶対にイヤ。
「面白い体験させてやっから」
口元だけで笑うクロに、彼は怪訝な顔をする。
あんまり状況がつかめてない顔。
「面白いこと、って……」
「まあ来てみりゃわかるって」
クロが彼の肩をポンと叩いたとき、
「おお~、ヘイヘイヘーイ、何やってんの!?」
遠くからでも響く、はちきれんばかりの声。
「木兎……」
木兎ともう一人。
木兎より背が高い子ひょろっとした子が歩いてくる。
2人ともハーフパンツにTシャツ。
「あっれ、なんでいんの?」
木兎の驚いた眼が、私を見て、すぐに面白そうに輝きだす。
「ちょっと……用事」
「なんだよ、黒尾、なに合宿中に息抜きしてんだ」
「んなんじゃね~って」
「てか、俺だって何度も誘ったのに!」
拗ねた顔で睨まれる。
毎日のように木兎からはLINEがきてた。
『合宿中に遊びにこいよ』
合宿中は遊んじゃいけないんじゃ……と思うけど、
『少しぐらい息抜きしたって俺強いから』
全国5本の指に入る人に言われたら、納得するしかない。
「ちょっと黒尾、俺の元カノ呼びつけないでくれる?」