第6章 年下の強引なカレ
バカだ。
こんなとこまで来て。
さびれた小さな駅に降りると、どこからかカエルの大合唱が聞こえてくる。
夜9時。
駅前の商店街は真っ暗で、駅と隣接するコンビニだけが明るくて、少し不気味。
「遅せ~し」
駅前にクロがいた。
いつものバレー部のジャージじゃない。
Tシャツにデニム。
「ゼミ、あったから」
「夏休みだろ」
「うちのゼミは夏休み関係ないから」
「工学部なんてガチな学部入るからだろ。普通文系だろ」
「普通の女がいいならそういう人探せば?」
「そういう言い方が可愛くないっての」
「可愛くなくていい」
「……うざ」
「……」
「素直なのはヤってる時だけだよな、ホント」
小さな溜息。
自分で、よくわかってる。
性格が、可愛くない。
素直に甘えられない。
でも、好きな人に言われれば、心に刺さる。
「合宿、抜けてきて、いいの?」
「研磨たちに頼んであるから朝メシまでに帰ればいい」
「ばれたらまずいんじゃ……」
「あんたに関係ないし」
「でも……」
「俺との関係終わらせなくていいなら、帰るけど?」
「……」
終わらせたい。
苦しいから。
田んぼ道を歩き出すクロの背中についていく。
「どこ行くの?」
「ホテル」
「……」
「青姦でいいなら、外でもいいけど? それとも研磨たちに見られながら合宿所でヤる?」
「スルんだ、やっぱり」
「そのために呼んだんだろ。つか、あんたとの最後の夜だし? そりゃ思い出深い夜にしなきゃ、ダロ」
「ラブホで思い出づくり?」
「不満? これで俺と終わるんだからいいだろ」
すぐにホテル群が見えてくる。
どこにでもある風景。
森然のような田舎でも、必需品なのか、かなりの数がある。
「……黒尾さん?」