第4章 新しい年下のセフレ
「……なんで、別に私じゃなくても、」
「ダメ。あんたがいい」
強い声音。
視線はテレビに向いたまま、強い否定だけが戻ってくる。
「……どうして」
「……別に。慣れてるから?」
「……」
「あんたのカラダ、すぐ濡れまくって、具合いいし」
「それだけ……?」
「……好きだから」
「え、」
「って、言って欲しい?」
初めてクロの顔がこっちを見た。
探るような、試すような、真っ黒の瞳が、とっさにベッドで上半身を起こした私を見てる。
「……も、」
もし「言って」って言ったら……
「って、ウソ。そんな重いの面倒くさいからあんたなんだろ」
口端だけで笑いながら、クロがベッドに寄ってくる。
「……って風邪引いてちゃデきないから、また良くなったらがっつり弄り倒してやるし、もう寝とけ」
頬から肩を撫でるクロの手が、言葉とは裏腹に優しくて……思いっきり振り払った。
「なに、やっぱりひどくされるのが好きってか」
「………もう帰って」
「あ? なに急に」
「もう帰って。それから、もうここにはこないで」
「俺なんか変なコト言った?」
首をふる。
クロは何も変わってない。
いつもどおり。
変わったのは……私。
「なんだか、面倒くせぇな、今日のあんた」
溜息まじりに吐き出すように言われて、胸がギュッと詰まった。
「……もう会わないから」
「なに拗ねてんだか。そういうの、ウザいだけだってわかってんの?そういう男の気を引こうとするような態度、あんなには似合わないし」
「拗ねてないし、別に気を引こうなんて、……けほっ、っ、」
勢いあまって咳が続く。
「てか、もう寝ろ。俺やっぱ帰るわ。居心地悪いし、ここ」
咳が止まったところでベッドにもぐりこむ。
「また連絡する」
「しないで。出ないから」
「勝手に言っとけ」
カバンを掴んで出ていく後ろ姿を、布団の隙間から見送る。
今夜はここにいるって言ったのに……うそつき。
少しだけ、期待してた。
今日、この関係が普通の彼氏と彼女のように変化するのかも、って。
ずっと朝まで横にいてくれるかもって。
拗ねたって、甘えたって、クロは変わらない。
わかってたことなのに。