第4章 新しい年下のセフレ
遠くで音がしてる。
スマホを手にしたままうとうとしてた意識に、玄関のチャイムの音が入り込んできた。
誰かきた。
ネット注文した服かも。
ふらふらの脚でインターホンに出ると、
『あけて』
クロだ。
なんで?
玄関ドアを開けると、本当にクロがいた。
「やっぱり」
入るなり、おでこに手を当てられる。
「……っ」
「おまえ、風邪引いてるだろ。すげぇ熱い」
「なんで……」
「あんな声でゼミの飲み会って、あんたバカ? 誰だって風邪引いてるってわかるっつうの」
肩にかけてたカバンを下ろしたクロは、私をベッドへ連れて行く。
「ほら早く寝ろって」
「大丈夫、もう今日1日寝てたから」
「嘘ヘタ。つうか、ドラマとかで自己犠牲精神丸出しで友達かばってすぐ死ぬキャラ」
なに、その例え……
「なにか食ったのかよ?」
「……まだ」
「だと思った」
溜息とともにカバンから出したコンビニの袋を渡される。
「これ、買ってきてくれたの……?」
「何がいいかわかんねぇけど、まあ適当に」
「クロ……なんか変……」
「なにが」
「………」
セックス以外の理由で来るクロなんて、クロじゃないみたい。
「……私、今日は無理だけど……」
「なにが」
「セ……クス……」
チッと鋭い舌打ちがした。
「病人相手に突っ込むって俺はドSか? 変態か?」
ドSは否定できないんじゃ……
「……だって、いつも」
「てか、どうしても今嵌めたいなら、別の元気な女探すし」
「……ぁ、だね……」
だったらなんで来たの?
それこそ何の理由もメリットもない。
「てか、お前は何でもいいから食ったらさっさと寝ろって」
どかっとソファに座るクロは、すぐ帰る気配がない。
スマホをいじりだしたクロの前で、何とか少し口にして、歯を磨く。
汗で濡れたパジャマを着替えてベッドに入っても、まだクロはいた。
サイレントしてテレビを見てる。
実業団の男子バレーの試合のようだ。
真剣な表情で画面を見つめてる。
クロが、何もしない。
何もしないでここで一緒にいるなんて、初めてで……
なに喋っていいか、わからない……