第3章 好きになったら……
「で? セックスする以外に何があんの?」
「………」
「いきなり何が不満? 俺に何して欲しいわけ?」
「………」
面と向かって訊かれると、言えなくなる。
ちゃんと付き合おうよ。
簡単な一言なのに。
「私、……」
ヴーっヴーっ。
何かが震えてる。
「あ、俺」
ズボンのポケットから出したスマホを見たクロが「マジか」と呟いた。
「何?」
「今日コクってきた女」
肩を竦めながらも、通話ボタンを押すと「どうした?」と話始める。
声……、なんとなく優しい。
「……今? 大丈夫……あ、あれ、ありがとな……いや、まだ……
でも、悪い、俺やっぱ今は無理だから……」
お礼と謝罪。
断片だけでも、なんとなくわかる。
何かをもらって、でも告白は断ったんだ……
ちょこっと喋ってから電話を切ったクロは、嫌そうにスマホを放り投げる。
「もしかして、告白とかされたんだ?」
「あ……」
面倒くさそうに天井を仰ぐ顔が、YESだと言っている。
「同級生?」
「……後輩」
「へぇ……クロ、モテるもんね」
口数少なくて、背が高くて、男っぽい。
普通にかっこいい高校生。
「年下とか同じ年とか、面倒くさい」
「でも、可愛いじゃん」
「セックスで気ぃ使うの面倒くせぇ」
「するのは前提なんだ」
「あたりまえだろ。高校生の男だぜ、俺」
「じゃあ慣れた玄人のお姉さんにでも頼んだら?」
嫌味のつもりで言ったのに……
「だから、ここに来てんだろ」
「………それって、私が玄人だって言いたいわけ……? セックスのためだけにクロと会ってるって……」
声が震える。
「違うんだ?」
「……っ!」