第3章 好きになったら……
「姉貴、なにやってんだよ、こんなとこで」
声がした方を見ると、制服の男子高校生が立っていた。
音駒の制服。
自分もついこの前まで着てたからわかる。
……みたことある、この人。
「悪い、待ち合わせ遅れて。てか、そいつら何?」
威圧的な態度。
高い身長。
硬質な面立ち。
彼が一歩前に出ると、私の腕を掴んでた手が緩んだ。
なんだ、こいつ。
面倒くせぇからやめとこうぜ。
絡んできてた2人が離れてく。
後姿が見えなくなって、ほっと息を吐いた。
まさか、自分が絡まれるなんて思わなかった。
飲みに行こうよ、どっか楽しいとこ行こうよ。
ずっと腕を掴を掴まれて、離してもらえなかった。
怖かった……
「……あの、ありがとう」
「こんな繁華街で、こんな時間に一人でふらふらって、ナンパしてくれって言ってるのと同じジャン」
金曜日の夜。
22時過ぎ。
裏手にはラブホ通りがある繁華街。
「別にそんな……てか、姉貴って」
「弟と待ち合わせしてた設定。彼氏設定の方がよかった?」
口元だけでにやりと笑う顔。
やっぱり、知ってる、この人。
「それ、音駒の制服……バレー部だったよね?」
「今もバレー部だけど」
やっぱり。
仲良かった仲間にバレー部主将がいて、たまにみんなで試合観戦に行った。
その時に、見たことがある。
背が高くて、1年なのにバレー上手いって言われてた子。