第3章 好きになったら……
ブルル。
バッグの中のスマホが震えた。
『マジで連絡とりたいんだけど』
クロだ。
なんてことないメッセージ。
でも、クロの苛立ちが画面から伝わってくる。
木兎と会ったあの日から、2週間。
ずっとクロからの連絡を無視してる。
自分の気持ちに収拾がつかなくなって、どういう顔してクロに会えばいいのか、わからない。
何を話せばいいのか。
……今まで、どうやってクロと話してたんだろう。
スマホをバッグに入れながら、マンションの外階段を上る。
3階って、中途半端だ。
エレベーターを待つほどじゃない。
でも、疲れているときは、登るのがつらい。
最近、ゼミとかサークルとかで忙しいのもあったけど、それ以上に精神的に疲れてる。
重い足を引きずるように角部屋の自分の部屋まで歩く。
俯けていた視線の隙間に、スニーカーが映った。
「……クロ」
ドアに寄りかかって、クロがじっとこっちを睨んでる。
「メールなんで無視すんだよ」
「……無視なんて、そんなのしてないし」
「ウソつけ。今、俺が送ったの、無視しただろ」
「後で返信しようって……」
「2週間無視しまくって、今更言い訳?」