第3章 居候です
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまです」
今日は黄瀬特製のオムライスだった。
おそらく家の人が作っていたのをコピーしたのだろう、ふわふわとろとろの卵が乗っていて美味だった。
どの料理も一回は失敗する私と違って、黄瀬はなんでもこなしてしまうので本当に憎い。
「もう黄瀬がずっと作ってよ…」
「えっ、嫌っスよ!」
「こんな美味しいの食べたら作る気力がない」
「オレはなまえさんのご飯が食べたいんス!」
そうは言っても、私の料理なんて普通の味だ。
何度も作っても、なぜか美味しくはならない。
「ちゃんと美味しいっスもん。なまえさんの味、濃すぎなくて好き」
「へぇー」
「オレ、サッパリ派なんで」
「女子か」
「なまえさんもそーでしょ?」
「まぁね」
「一緒!」
「ハイハイ」
でもまぁ、美味しいって言ってくれるならいいか。
なんて思ったりもする。
「あーお腹いっぱい!」
「洗い物はするね」
「えっ、いいっスよ!」
「ダメ」
「じゃあ一緒にやりましょ!」
「…はぁ、頑固だなぁ」
こうしてじゃれ合うのも割と楽しいし、うるさいようで気が遣える子だからストレスも溜まらない。
同棲生活が楽しいと思うのは、多分今まで一人が寂しかったから。
「なまえさんは食器拭いてって」
「う、うん…?」
「その綺麗な手が荒れたら困るっスから」
「ああ…」
それに、なんだかんだとちゃんと女の子扱いしてくれる。
こんな性格でも、口調でも、ちゃんと。
まぁ、モデル業の賜物かもしれないけど。
「お風呂先入りなよ」
「え、」
「拒否権は無し」
「う…わかったっスよぅ…」
女の子の扱いなんて慣れてるのかもしれない。
それでも私のことを理解してくれているからこそだと思えば、急に黄瀬が可愛く見えてきた。
「後で一緒にアイス食べよーね」
「!!はいっス!」
元気いっぱい返事をした黄瀬は、10分程で上がってきた。
その後私もお風呂に入り、すぐに上がった。
早かったね、と黄瀬は笑ってドライヤーをしてくれた。
その後に二人でテレビを見ながら食べたバニラアイスは、冷たくて甘くて美味しかった。
そうして私達は今日もいつも通り、普通の日常を過ごしたのだった。