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海常高校バスケ部です。

第2章 はじまり


「お待たせ」



着替えを終えて黄瀬が待つ校門へ向かった。
私に気付いた黄瀬はご主人様を待っていた犬のように駆け寄ってきた。



「待った?」
「いえっ、大丈夫っスよ」
「そっか」



じゃあ帰りましょ、と私たちは歩き出した。
黄瀬はいつも私の歩幅に合わせてくれる。
長い足をちょこまか動かしてちゃんと隣にいてくれる。
そういうのはやっぱり、女の子慣れしてるからなんだろうなと思う。



「今日なんか疲れたー」
「バタバタしてたっスもんね」
「え、ヤダ見てたの?」
「そりゃあ久々になまえさんのマネージャー姿見れたんスもん!」
「これからは嫌でも見るのに」
「嫌にならないっス!」



本心なのか、単にノリで言っているのか。
わからないけれど、とりあえず私を喜ばせることには成功しているよ、黄瀬。



「あっ、そうだ!」
「ん?」
「今日はオレが料理当番するっス!」
「え、なんで」
「なまえさん疲れてるし!別に交代とかじゃなくて、今日はこれからもよろしくお願いしますって意味で!ね」
「…いいの?」
「いっスよ」
「じゃあ…頼む」
「はい!」



ありがたい事に、今日の当番は代わりをしてくれるそうだ。
こんな風に黄瀬はサラリとありがたい事をしてくれる。
というか、私の体調や状態や気分に異常に敏感である。
だからすぐに調子をあげようとしてくれる。
私もついそれに甘えてしまう。



「黄瀬、ありがと」
「…!ど、どうしたんスか急にー」
「お礼くらい私だって言うっつの」



そんなんじゃダメなことはわかっているんだけど。
どうしても何かにすがりたくなるんだ。
人間ってそういう生き物じゃない?



「ねぇ黄瀬」
「はい?」
「それじゃあ寝る前、マッサージしてあげるから早めにお風呂入っちゃお」
「えっ、それじゃオレが当番代わる意味無いじゃないっスか!」
「マッサージくらい余裕だよ」
「…そう?」
「ん」
「じゃあ…」
「ん!」



だからまぁ、たまには優しくしてあげようかなとか、思ったりもするわけですよ。



「なまえさんのマッサージ好きっス!」
「それは良かった。明日、きっと目覚めいいよ」
「また頑張れるっス!」
「おう。励め励め」
「はい!」
「もちろん勉強もね」
「…はい」



そりゃあ大事な後輩の一人ですから。
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