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海常高校バスケ部です。

第8章 ひと休憩の小さな嵐



「なまえさんの着替え待ってる間にお友達に聞いちゃった」
「誰だよ言ったの…」
「ごめん私」



笑いながらそういうクラスメイトは、私の親友だ。
とんでもない裏切りだ。



「もー、黄瀬には知られたくなかったのにーバカ―」
「ごめんごめん」



まあ、馬鹿にされるわけじゃないし良いっちゃ良いんだけど。



「あ、せっかくだし一緒に食べようよ」



と、いつも私が一緒に食べる子が言った。
なにがせっかくなのか。
女子の中に黄瀬って。…いつもの光景か。



「えっ、いいんスか?」
「アンタはなんで嬉しそうなのよ」
「だってなまえさんの普段が垣間見えるチャンスっスもん!」
「知らんでいい」



黄瀬が来るといつもこうだ。
まるで近所の可愛い子供に群がるおばさん軍団だ。
あれよあれよと教室の中に連れ込まれ、黄瀬は私達のグループの中に入った。
ここで黄色い声が聞こえないのは、おそらくこのクラスだけだろう。



「あ、黄瀬!お前来てたのか!」
「あ、どもっス早川センパイ」



女子はワイワイと話す早川を押しのけ、黄瀬に群がる。
もちろん、ファンとしてだけの行為でなく、面白い後輩が来た、という感じだろう。
家での私はどうだとか、話す必要もないことばかり。
それに素直に答える黄瀬。
いや、答えなくていいんだけど。



「話してばかりいないで食べなよ…」
「食べてる食べてる」
「あと10分で昼休み終わるけど?」
「マジで?!」
「ウソ!俺まだなまえさんのこと聞けてないっス!」
「聞かなくていいって」
「いつでも来なよ。教えてあげる」
「ありがとうございます!」
「おーい」



そうして騒がしい昼休みは過ぎていったが、今日という一日はまだまだ終わらない。



「また放課後お迎えに上がるっス!」
「いや、真っ直ぐに部室に行け」



ブンブンと手を振る黄瀬に早く行くよう手で促す。
が、まだ手を振って前を向かないので、仕方なくひらひらと手を振ると、満足そうに帰っていった。



「…嵐が過ぎ去ったみたい」
「こんな嵐ならいつでも歓迎だけどね?」
「私は歓迎しません」
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