第6章 あの頃の気持ち
「相性が最悪なのだよ」
木の陰に隠れて話を盗み聞きしていると、そんな言葉が聞こえた。
緑間と相性が悪いといえば…確かテツヤだったろうか。
紫原も相性が良いとは言えなかったが、緑間のお得意の占い系でいくといつもテツヤの事をそう言っていたような気がする。
「…誠凛などと無名の新設校に行ったのは頂けない」
ふと、そんな事が聞こえてきた。
…また、こいつらは誠凛をなめている。
私だってそりゃあ最初は弱そうだと思った。
だけど、今日の試合はもちろん、去年のインターハイ予選などを見て、誠凛はただものじゃないと思った。
それに今日はいなかったけど、去年は確か『無冠の五将』と言われていた人がいたはずだ。
…まぁ、今はそんなことはいいだろう。
「うおりゃっ!!」
「んなっ?!」
「なまえさん?!」
私は緑間に思いっきり体当たりをした。
緑間は持っていたカエルのオモチャを落としそうになって慌てていた。
間一髪でそれを抱きかかえ体勢を立て直したところで、緑間は私を振り返った。
「なっ、なんなのだよ?!…あ、みょうじ先輩?!」
「もしかしなくてもみょうじ先輩でございます」
「なまえさん…何でこんなとこに…」
「誰かさんが挨拶に来なかったからでしょーが」
「ゔっ…」
そうだ、元々私は黄瀬を探しに来たのだ。
だけど久しぶりの緑間だし、さっさとお別れもちょっと寂しい。
「言っとくけど!テツヤがあの学校に行って正解か不正解かはテツヤが決めることだから!それで負かされて泣いてもしんないからねー」
「なっ…、お言葉ですが先輩、俺達秀徳高校が負けるというのはありえないですよ」
「……」
別に私は誠凛の人間じゃないけれど、その慢心な態度にイラッとしたので思い切り睨んでやった。
静かに流れるこの沈黙を一番に破ったのは、言わずもがな黄瀬だ。
「なまえさん、も、戻りましょ…?」
「おいテメー!!」
すると、後ろの方から罵声のようなものが聞こえてきた。
「誰あれ」
「さぁ…」
「高尾なのだよ」
「は?てか何引いてんのあれ…リヤカー?」
「じゃあ俺はこれで」
「あっ、緑間!またインターハイでね!」
「…ハイ」
そうして緑間は ”高尾くん” と海常を後にした。
「…さ、戻ろっか」
「っス」