第6章 あの頃の気持ち
そしてやってきた、誠凛高校との練習試合日。
「キャプテン!オレ誠凛迎えに行ってきます!」
アップ中、そろそろ時間かなと思った時、私より先に言葉を発したのは黄瀬だった。
「ああ?お前はアップしてろよ」
「いや、海常結構広いんで迷っちゃうかもしれないじゃないっスか!」
「それなら私が行くから」
どうせテツヤに会いたいとかそういうことなんだろうけど、そうでなくとも試合に出る可能性のある選手が出迎えはおかしい。
返事も聞かず出ようとする黄瀬の服を引っ張る。
「ええっ!?じゃあ一緒に行くっス!」
「1人でいいから。あとあんま誠凛なめてたら知らないから」
「別になめてるわけじゃ…」
「もうほんと来てるだろうから。先輩、行ってきます」
「おう、頼むわ」
まだ後ろでグズグズ言っている黄瀬をガン無視して体育館を出る。
少し歩いたところで白を基調としたジャージの集団が見えた。
「すみません、お待たせしました」
「あっ、なまえちゃん!」
「リコちゃん!わざわざ来てもらっちゃってごめんね。出迎えも遅くなって…」
「いいのよー!」
リコちゃんとはあの日こっそりアドレスを交換しており、今でも何度かやり取りをするほど仲良くなった。
おかげで居心地も悪くない。
「黄瀬君はいないんですね」
「わぁっ!テツヤ!…そー、実はさっきまで出迎え行くとか言ってたんだけど、アップさせといた」
「ボクもそれがいいと思います」
今のテツヤの言葉はただ注意をするというよりは、負ける気はない、という意思表示だと思った。
うん、テツヤらしい。
そこがテツヤらしくて好きだ。
「しっかしほんと広いわね〜」
「はは、まぁね。でも私は誠凛の方が好き。校舎はね」
「あら、じゃあウチ来る?」
「まさか」
リコちゃんとの女子トークに花を咲かせ、まずは体育館まで案内する。
「「「「お願いします」」」」
が、なんだこれは。
「え…ハーフ?」
試合コートが用意されているのは体育館のハーフのみ。
今日もバスケ部しか使っていないというのに、分ける必要はないだろう。
てか、私が行ってる間にこうなってるって…
きっと監督は私が何か言ってくると予想していたんだろう。
だけどそんなこと関係無い。
「監督!!」