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海常高校バスケ部です。

第5章 中学三年生



「ア、アメ リ カ……?」
「ああ」
「それ…いつから…」
「…決断したのは今年の春」



今年の春から…?
じゃあ、夏祭りの日も本当はずっと…



「悪りぃ。何度も話そうとはしたけど、中々言い出せなくて」



余りにも突然だった虹村の決意。
ずっと引っかかっていたのはこういう事か。



「理由は…」
「実は去年の春から親父の体調が良くねんだ」
「え、お父さん…」
「ああ。それで技術も発展してるアメリカの病院に移転する事になって、それに付いてく」



ずっと1人で考えていたんだろうか。
私はお父さんの事も虹村がここまで考え込んでいた事も知らなかった。
他の部員は知っていたのだろうか。



「ほんと、悪りぃ。相談も出来なくて」
「いや…仕方ない、よね」



仕方ない。確かにそうなんだ。
きっとその時私に相談されていても、今みたいに何て言ったらいいのかわからなかったと思う。
それでも主将を続けてほしいと思いつつ、虹村の気持ちを考えると重荷を減らした方が良かったのかとも思う。

そしてきっと、私の中で虹村に出す答えなんて出なかった。
私は虹村を思いやっている、そんなつもりでいただけだったんだ。



「だからさ、」



それでもこんな結末は嫌だと思った。
だってまだ好きなのに。




「別れよう」






どうして今なの?
今じゃないとダメ?
卒業式の日じゃ遅い?
そもそも別れないとダメなの?
外国に行ったらもうダメなの?

浮かぶ疑問は声にならず、私は涙を流して彼の言葉に頷いた。



「オレのワガママで、ごめん。ほんと、ごめん」



遠距離恋愛なんて、まだ中学生の私達には余りにも大きな壁だった。
それは虹村にとっても同じで、しかも待たせる身となれば私以上の重荷になるはずだ。
彼が今別れようと言ったのは、手遅れになる前の決断に違いない。
根は優しい人だから、いっぱい考えてくれたんだろう。
ならば私はその邪魔をしないようにしなければ。

私は自分自身にそう言い聞かせた。



「最後まで仲良くしてね…」
「当たり前だろ」
「…虹村…」
「なんだ?」



聞き分けの良い、いい子でいるから。
お願い、最後のワガママ聞いて。



「キスして…」



そして虹村は頬を流れる涙を拭い、優しいキスをしてくれた。

こうして不器用な私達の恋は、終わった。
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