第5章 中学三年生
ピーーッ
「試合終了!!」
ついに決勝が終わった。
私達はまたしても優勝した。
3年生はあまり活躍出来なかったが、一緒にベンチに座って試合に参加した。
それだけで十分だった。
後輩がちゃんと戦って優勝してくれたから。
「なまえ先輩…」
「さつき、何泣いてんの」
「うっ、先輩だって…」
「ははっ、さつきのが移ったんだよ〜」
私達3年生はこれで終わり。
悔いは無い。
無いけれど。
やっぱり寂しいものは寂しい。
「さつき、これからも色々あるだろうけど頑張ってね」
「ううっ、はい…!」
ああ、そんなに泣かないでよ。
移っちゃうんだってば。
「整列!!」
「「「「ありがとうございました!!!」」」」
こうして私達の帝光バスケ部としての試合は幕を閉じた。
「終わっちゃったね…」
「ああ」
解散後、私は虹村と2人で歩いていた。
こうして2人でいると、終わったんだと改めて実感が湧いてきて涙が溢れそうだ。
「泣くなよー」
「泣いてないっ」
「嘘つけ」
「虹村だって」
「泣いてねえよ」
「泣く寸前の顔してる」
「うっせ」
そうふざけ合いながら、私達は静かに涙を流した。
その涙は誰に知られることもなく、地面に堕ちた。
それからもしばらく泣いていた私達は、ある公園のベンチに座っていた。
「泣き止んだ?」
「30分前にはな」
「嘘ばっかり」
もうどれくらい泣いただろう。
わからないけれど、とりあえず瞼が重い。
隣にいる虹村も、まだどこか心ここに在らずという感じだ。
「ねぇ虹村」
「ん?」
「虹村は進路どうするの?」
もう付き合って長いというのに、そんな話をしたことなかった。
お互い何となく避けていたような気もする。
だけどこれは知っておくべきなんじゃないかと、ようやく勇気を出して聞いた。
虹村はまだ黙っている。
何かを考え込むように、じっと。
私も急かすことはなく黙って返事を待っていた。
「オレ、アメリカに行く」
私は耳を疑った。
虹村の顔を見ることが出来ず、前を向いたまま、脳みそをフル回転させて考えた。
虹村が、アメリカに…?