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海常高校バスケ部です。

第5章 中学三年生


そうして夏はあっという間にやって来た。

そんな今日は夏の一大イベント、夏祭りだ。
私は浴衣を着て虹村と回っていた。



「あっ、焼きそば食べたい!」
「ソースとか大丈夫か?」
「ちゃんとおしとやかに食べますぅー」
「出来んのかよ」
「失礼な!」



たくさんある出店は行きたいところ全部に行き、虹村はそれに全て付いてきてくれた。
もちろん、虹村が行きたいところにも行った。
そして、たまたま行く日が違ったのか、キセキの世代なんて呼ばれ始めた彼らと会うこともなかった。



「なんか不思議ー」
「なにが?」
「夏祭りに彼氏と来てるなんて」
「なっ…なんだそれ…」
「だって今までは彼氏なんか夏祭りの前とか後にいたもん」
「あー…」
「しかも、虹村とはもう1年も経ったんだよ。こんなの初めてだし」



そう、気づけばもう1年経っていた。
試合があったからというのもあるかもしれないけど、この1年とても早かった。
それだけ充実していたということなんだろう。



「幸せだなぁ…」
「…っ」



だけど、一つ気掛かりなことがある。
それは主将の交代についてだ。
全中2ヶ月前となった今、主将は虹村ではなく赤司になった。
その理由を私は知らない。



「ねぇ虹村」
「んぁ?」



いつもなんだかんだと聞くタイミングを逃して、未だ聞けぬまま。
今日こそは!と思ったけれど、隣でイカ焼きを頬張りながら少し楽しそうな甚兵衛姿の彼を見ると、また声が引っ込んだ。



「…ううん、何もない」
「んだよ」



今日はまだいっか。
せっかくのお祭りだし、楽しまなきゃ勿体無い。



「もうすぐ花火の時間だよ。行こ」
「ああ、そうだな」



今日が終われば全中に向けて練習の日々。
それが終われば引退。
そして受験。
一年なんてあっという間だ。
虹村とこうして2人で居られるのも、そう多くはないだろうし…。



「きれー…」
「だな…」
「あーあ、もう今日も終わりかぁ…」
「なんだよ、オレともっといたかったか?」



そう冗談ぽく笑う虹村だが、私は笑えなかった。



「…うん」
「えっ」
「もっと一緒にいたいなぁ…」
「みょうじ…」



なぜかわからない、とても寂しい気持ちになった。

これは夜空で咲く花火が、一瞬で散っていくのを見たからだろうか。
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