第5章 中学三年生
「なまえセンパーイ!」
進級した私達は、3年生になった。
そしてその春、例のモデル中学生、黄瀬涼太を新入部員として迎えた。
黄瀬はテツヤや青峰達と同級生だが、一軍にスピード昇格してきた。
まさかここにも天才がいたとは。
「ハイハイ、なに?」
「オレはいつ試合に出れるっスか!」
「えーうーん…」
「オレと1on1して勝てたらな」
突然間に入ってきたのは虹村だ。
ここ最近ちょっと不機嫌だ。
「えっ!キャプテンとはちょっと…」
「そんな弱気じゃオレには勝てねえ!!いいな!!」
「そんなあっ!?」
どうしてか黄瀬には特に、当たりが強かった。
「なんか冷たくない?」
「そうか?気のせいじゃね?」
心当たりがあるとしたら、一つだけ。
「モデルしてるから?」
虹村は監督に誘われてバスケを始めたとはいえ、今ではスッカリ夢中だ。
それで主将にもなれた。
そんな一生懸命やる部員が多い中、黄瀬はモデル業もやっていた。
もちろん練習にはちゃんと参加しているが、まだ少しチャラチャラした雰囲気がある。
それが気になっているのだと思った。
「あー…まぁそれも無くはないけど。それ以外にも問題点があんだよ」
「え?なに?」
「や、それは言えねえけど」
「なんでよー」
だが他にも理由はあるらしい。
結局最後まで教えてはくれなかったけれど。
その日の帰り、私達はいつも通り他愛もない話をしながら一緒に帰っていた。
しばらくして私の家に着いた時、虹村は突然変な事を言った。
「みょうじ」
「なぁに?」
「お前はオレの女だからな!いいな!」
「へっ」
「じゃ!」
そう言うだけ言って走って帰ってしまった。
どうして急にそんなことを言うの、と恥ずかしくなって私は1人、家の前で俯いた。