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海常高校バスケ部です。

第4章 不器用な二人


中2、夏。



「嘘じゃねえって」



それは突然のことだった。



「お前のことが好きなんだって…みょうじ」




ー 30分前 ー



「いたっ」
「大丈夫か?!」



最近、部員数も増えて私の仕事も増えた。
全中前だからわかってはいたけど、思っていたより余裕が無かったようで寝不足が続いていた。
それで珍しく部活中にボーッとしてたんだと思う。
私の後頭部にボールが直撃した。



「みょうじ、大丈夫か?!オレ保健室連れて行ってくるわ!」
「お、おう」



頭が痛い。ズキズキする。



「氷当てとけ」



後頭部に当てられた氷がひんやりとして痛みは麻痺していった。
ボーッとする。



「…痛むか?」
「だいじょぶ…」
「お前が『大丈夫』って言う時って大体大丈夫じゃねんだよな」



今目の前には本当に心配しているような呆れたような顔をした虹村がいる。
それはもう、困ったように。

頭を打ってどうかしていたのだろうか。
気がつくと虹村の頭を撫でていた。



「…みょうじ…?」
「んー大丈夫だよー」



いつもなら子供扱いするなとか言いそうなものなのに、今は大人しく撫でられている。
虹村の様子が少し変だ。



「みょうじ…お前さぁ…」
「んー?」
「…無防備すぎだから」
「え…?」



突然だった。
変どころじゃない。

私は、抱きしめられていた。



「に、にじむ、ら、」
「いやほんと悪りぃ…」
「な、んで」
「ごめん、みょうじ…オレ…」
「なに…」



思ってたより大きくてしっかりした体。
離れようにも離れられないくらい、力を込められた腕。



「オレ…みょうじのことが好きだ」



耳元で囁かれた…低く震えた声。



「え…嘘…」
「嘘じゃねえって」



心地いいはずなのに、速くなる鼓動。



「お前のことが好きなんだって…みょうじ」



"好き"

その言葉に嘘はないとわかってはいても、信じられない。
そんなような態度、今の今までなかったのに。



「いつから…」
「わかんねー。気づいたら好きだって思ってた」
「そんなの…」



私だってずっと好きだった。
あの日、一緒に買い物に行ってクレープを食べたあの時から…。



「信じらんない…」
「信じて」
「無茶だよ…」
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