第4章 不器用な二人
それから月日は流れ、中1の冬。
「なーみょうじ」
「んー?」
「今度の土曜に付き合ってほしいところあんだけど…」
「?」
少し申し訳無さそうな、恥ずかしそうな、そんな様子で虹村は私を誘って来た。
そして土曜日。
「よぉ…悪りぃな。休みの日に」
「ううん、大丈夫」
この頃の私は、少なくとも人並みに女子らしかったと思う。
出掛けるのは二人きりだと知った時、正直緊張した。
服も髪型も、どうしようと悩み、気合い入ってたら変だろうからとなるべくシンプルなコーデにした。
…虹村はそんなことに一ミリも興味無いだろうが。
「どこ行くの?」
「んっ?あ、あー…とりあえず雑貨屋かなー」
「雑貨屋かぁー…。もしかして、誰かにプレゼント?」
「あぁ、言ってなかったか。お袋にな」
「へー!誕生日?」
「そう、明日」
「明日?!」
なるほど、合点がいった。
何をあげればいいのかわからず、女子の私を誘った。
それに、聞いたところによると虹村は特別仲の良い女友達はいないらしい。
クラスメイトとはそれなりに喋るが、こういうことを頼める人はいないようだ。
「そっかぁ…。じゃあ張り切って選ばないとだね!」
「おう」
それからいろんなお店を周り、納得のいく物が買えた。
「悪りぃな、付き合わせちまって」
「いやいや、そこは謝るとこじゃないよ」
「ん…サンキュー」
「うん。私も楽しかった」
「そっか…。あ、」
「ん?どした?」
「あれ、奢る」
「え?」
そう言って虹村が指差したのは、ワゴン車で開かれているクレープ屋さんだ。
その可愛い外観のクレープ屋さんには、女客がダントツで多い。
意外と甘いの好きなのかな…。
「クレープ好きか?」
「えっ、うん、好き!」
「…ん、じゃあ行くか」
種類は豊富で、どれも美味しそうだ。
悩んだ末に選んだのは、アイス付きのいちごクレープだ。
「お前容赦ねぇなー」
「奢ってもらえるなら遠慮はしないよ?」
「はは、潔いな!」
「図々しい?」
「いーや、むしろそういう方が好きだぜ」
ドキッ
なんだ…?走った後みたいに心拍数が上がってる。
「気遣われるのってムズムズして嫌なんだよなー」
「あー、わからなくもない」
「だよなー」
その日、後に知る感情を抱き、私達は帰った。