第4章 不器用な二人

「ほんっっと信じらんない」



誠凛を出た私達は家へと向かっていた。
私は怒っているのに、黄瀬はなぜかニコニコしていた。
そして私のイライラは増すばかりだ。



「でもおかげで黒子っちに会えたじゃないっスか〜」
「不本意だけどね」
「まぁいいじゃないっスか！」
「てかそこじゃねーし。連絡も無しに行ったらあちらに失礼でしょって」
「それはごめんなさいっス…」



まったく、どこまで好き放題やるんだか。
ちょっと…いや、かなり調子に乗ってるんじゃないだろうか。



「けどなまえさん！もーちょいおしとやかにしないとー」
「はい？」
「ほら、そーゆーとこ！絶対直した方がいいっス！」
「うっさい」
「美人なのに勿体無いっスよー」
「余計なお世話だ」



とりあえずイラっとしたので一発殴っておいた。
私だって好きでこんなんになってるんじゃないっつの。
女子力高い女子ばっか見てるからそんなこと言うんだ。
私はモデルじゃない。
私はただの女子高生だ。
それに、笠松先輩だって今の方が良いって言うだろうし。(理由は置いといて)



「そーいやなまえさんて、彼氏いないんスか？」
「いないよ」
「美人なのに！」
「言うほどじゃん。てか、いたらアンタと同居しないって」
「あ、そっか」



別に恋愛に興味が無いわけじゃない。
ただ、今は部活に専念したいだけ。
彼氏なんて、存在だけで私にとっては重荷になるのだ。
相手が悪いわけじゃないけれど。



「じゃ、彼氏出来たらすぐ言ってくださいね」
「なんで？」
「住むとこ考えなきゃじゃないスか」
「…しばらく出来ないから安心して」
「え？」
「だからまだいてよ」
「なまえさん…」



相手を思いやっているつもりが、やり過ぎていたり。
自己満足だったり。
それに何より、私は不器用だった。
私は恋愛に不向きなのかもしれないと、あの時思った。



「過去に…なんかあったんスか？」
「え…」
「こんなこと、聞いちゃダメだろうけど…」
「ううん、大丈夫」



そうか、黄瀬は知らないのか。

確かに、過去に何かあったといやあった。
ただそれが私にとって大きな何かであるかどうかは私にもわからなかった。
一つ言えるのは、


私もあの人も、本気でお互いを想っていた。




「黄瀬、驚かないでね」